□第26回大会(2015年10月31日〜11月1日)
  於:京都教育大学


【課題研究1】 社会科で習得させる知識・理解と価値観・行動の指導と評価 ――国内外の関連領域の検討をふまえて――

 社会科とは何を目標とする教科であるか。この答えについては、歴史学、地理学、社会諸科学にもとづく科学的な社会認識の形成に重点をおく見方から、態度や価値観も含めた総合的な資質の育成にあるとする見方まで多様である。本課題研究では、科学的な知識・理解はもちろんのこと、それらを価値観や態度、行動の能力の発達と関連づけて総合的にとらえるところに社会科の教科としての特質があるという立場に立つ。
それでは、このように社会科の目標を総合的にとらえた場合、その目標をどのように具体化し、指導に生かせばよいのであろうか。そして、それをどのように評価すべきであろうか。このように指導と評価を一体とした検討は、これまで十分に行われてはこなかったと考えられる。
 一方、近代化やグローバル化などの急激な社会の変化を背景として、グローバル教育、シティズンシップ教育、福祉教育などの現代的な課題に対応した教育活動が注目され、社会科に関連する領域として実践や研究が蓄積されてきている。地球に住む市民としての資質や生き方に関わるこれらの教育活動では、いずれも、従来の近代学校教育で重視されてきた知識や理解、技能と並び加えて、価値観や行動能力の育成が重要な要件とみなされてきた。
 そこで本課題研究では、このような関連領域においてどのように学習者の価値観や行動能力を目標化したり評価したりしているのかについて検討することによって、社会科におけるそうした課題に迫れると考えた。関連領域の中でも報告者の問題関心から特に、オーストラリアのグローバル教育、イングランドのシティズンシップ教育、日本の福祉教育の検討をふまえて、社会科において、学習者の価値観と行動の指導と評価をめぐり、理論的に何が論点となるのか、そして実践的にどのように指導と評価を進めていけばよいのかを明らかにしていきたい。

報告者:
オーストラリアのグローバル教育の検討をふまえて
木 村   裕(滋賀県立大学)

イングランドのシティズンシップ教育の検討をふまえて
川 口 広 美(滋賀大学)

日本の福祉教育の検討をふまえて
長谷川   豊(京都府立大学)

指定討論者:
鋒 山 泰 弘(追手門学院大学)

司 会・コーディネーター:
岸 本   実(滋賀大学)


【課題講演】 戦後の学校の展開と人づくりの課題

戦後70年の地点に立って戦後の学校を見通すと、その背景にある社会のありようや範囲が大きく変化してきたことがわかる。学校の人づくりが想定している社会と現実の社会にはずれがあるが、前者の側に立ってみると、地域社会から日本社会へ、さらに日本社会にとどまらないグローバル社会へという社会の広がりのなかで人づくりの課題が展開しているのがみてとれる。本講演では、その画期を1950年代の後半と1990年代の前半におき、学校はどのように展開してきたのか、そしてそこでの人づくりの課題がどのように変化していったか。その点を押さえながら浮かび上がるこんにちの教育目標・評価論の課題をとらえてみたい。

講師:
木 村    元(一橋大学)

司 会:
山 根 俊 喜(鳥取大学)



【公開シンポジウム】 教師として求められる資質・能力  −教育目標・評価論からの提起−


  各地の教育学部・教育大学に専門職大学院としての教職大学院が発足するとともに、教員養成の高度化・修士レベル化の取組も開始されるようになった。さらに、専修免許状の在り方や教員養成の在り方について、文部科学省や協力者会議などでも検討が行われつつある。
 本学会の大会が教員養成系大学で開催されることを鑑み、教師として求められる資質・能力について、教育目標・評価論から論議をすることも重要であるだろう。あるべき教師像や教員養成教育について、多面的な視点から論じられることを期待したい。

シンポジスト:
教職大学院における教員養成と研修
山 崎 雄 介(群馬大学)

教員養成の運営と評価に見る日本的特質
 −教育実習を中心に−
岩 田 康 之(東京学芸大学)

子どもたちの願いを踏まえた学校現場の取組
盛 永 俊 弘(長岡京市立長岡中学校)

指定討論者:
久 冨 善 之(元・一橋大学)

司会・コーディネーター:
藤 岡 秀 樹(京都教育大学)