□第27回大会(2016年11月26日〜27日)
  於:一橋大学(東京都国立市)


【課題研究1】 目標・評価の視点から見たアクティブ・ラーニングの検討

 アクティブ・ラーニングは、初等中等教育でも高等教育でも改革のキーワードとされている。方法としてのアクティブ・ラーニングがめざす目標とされているのは、資質・能力の育成、なかでも2007年の改正学校教育法で加えられた「学力の三要素」(@知識・技能、A思考力・判断力・表現力等の能力、B主体的に学習に取り組む態度)である。高大接続改革答申(2014年12月)、中教審教育課程企画特別部会の「論点整理」(2015年8月)と文言を少しずつ変えながら、繰り返しその重要性が強調されている。
目標としての資質・能力、学力の三要素とは、どのような性格をもつのか。その方法としてのアクティブ・ラーニングは、日本の授業実践・研究の中でどのように位置づけられ、評価されるのか。現場はそれを自分たちの実践の文脈の中でどう受け止め、つくり変えていけばよいのか。その課題はどこにあるのか。
本課題研究では、こうした問いに対し、それぞれの研究と実践にもとづいてご報告いただきながら、アクティブ・ラーニングについての議論を目標・評価論という視点から深めていきたい。

報告者:
「アクティブ・ラーニングの動向と課題――『資質・能力』の検討にもとづいて」
松下 佳代(京都大学)

「アクティブ・ラーニング時代の高等学校における『指導と評価の一体化』の可能性と課題――目標と活動の関係を問う」
渡邉 久暢(福井県立若狭高等学校)

「アクティブ・ラーニングと学習者の主体性――和歌山大学附属小学校での授業研究をふまえて」
二宮 衆一(和歌山大学)

司 会・コーディネーター:
木原 成一郎(広島大学)
斎藤 里美(東洋大学)


【課題研究2】 高大接続改革の課題
――「教育接続」のための目標設定と評価改革の課題とは――

「高大接続システム会議」による最終答申が2016年3月に出された。そこでは、「現状の入学者選抜では、知識の暗記・再生や暗記した解法パターンの適用の評価に偏りがち」で、「一部のAO入試や推薦入試においては、いわゆる『学力不問』と揶揄される状況」がある問題点が指摘され、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入や高等学校での「多様な学習活動・学習成果」の「多面的評価」が「継続的に行われ、適切に活用」される事が提言されている。高等学校での教育・学習改革の成果と大学の教育・学習改革を、受験者の「選抜」を通して整合的に結びつける「教育接続」を実現するためには、目標設定・評価手法改革にどのような実践上・研究上の課題があるのか。この課題研究では、教育養成の分野で高大連携を進めている大学の実践例の報告と、オーストラリアやカナダでの事例と日本との比較検討をふまえた報告をもとに考えてみたい。

報告者:
「奈良県内の高校と大学の教育接続――教員養成の分野で」
赤沢 早人(奈良教育大学)

「オーストラリア、カナダの大学入学者選抜制度に学ぶ高大接続のシステム(仮)」
山村 滋(大学入試センター)

司 会・コーディネーター:
平岡 さつき(前橋国際大学)
鋒山 泰弘(追手門学院大学)


【公開シンポジウム】 中内敏夫氏の教育学の現代的位相――変動する社会のなかで

本学会は、教育目標・評価論の総合的な研究を標榜してきたが、なかでも、重要な柱として教育の社会史、教育評価論、教育社会学という領域における研究が大きな役割を果たしてきた。その枠組みの重要な基盤となったのが中内敏夫氏の教育学であった。氏は去る3月22日に逝去された。中内氏を偲びながら、大きな社会変動のなかにある現代的な状況において、改めてその教育学を再検討し、新たな展望を得ようとしてこのシンポは企画された。
情報化社会、少子高齢化社会といったこんにちの社会を特徴づける社会変動のなかで中内氏の教育学はどのような有効性をもち、あるいは限界や制約があるのかを確かめ、その作業と重ねながら同時に本学会の課題を確認したい。
教育の社会史研究の場面では、デモグラフィーや家族の動向に注目する。中内氏は、「家族のおこなう教育」から家庭教育へと展開して学校の下請けをになうようになった点を指摘したが、こんにち、貧困、ひとり親家庭の増加や共稼ぎ家庭の一般化など、これまでの家庭教育自体が成立しなくなった現実がある。少子化社会のなかでの家族の教育をどのようにとらえるか。近代を超える長いスパンを押さえながらこんにちの状況を考えたい。
教育評価研究では、「新しい教育評価論」が大きく展開するなかでの到達度評価論をどうとらえるかに焦点を合わせたい。中内氏の教育評価研究のコアには到達度評価研究があったが、そこに根をもちながら展開することになった「新しい教育評価論」がグローバル化する日本社会に大きな影響力をあたえるにいたっている。この状況に対してはさまざまな議論があるが、それを踏まえて中内氏の教育学の理論的な枠組みとともに到達度評価をどのようにとらえるかを「新しい教育評価論」の立場から検討する。
さらに教育社会学研究では、こんにちの情報化社会への対応という点に着目したい。教育の変容は子どもたちの生活の変動に大きく規定されている。その生活をどう捉えるかは中内氏の大きなテーマのひとつであった。高度成長のなかで「子どもの生活の喪失」を指摘した氏の議論は、ソーシャルネットワークを抜きには成立しないこんにちの子どもの生活のなかでどのように位置づけられるか。新たな段階での教育と生活の関係を教育社会学の知見を踏まえて検討する。
こうした大きな社会変動の渦中のなかで教育目標・評価論はどのように課題意識をもち研究を進めていかなければならないか、中内氏の教育学を検証することで展望を得たい。

シンポジスト:
「中内教育学と家族の『個人化』──親子関係の変容の中で教育目標を考える(仮)」
太田 素子(和光大学)

「中内敏夫による到達度評価論の現代的意義――『真正の評価』論の視点から(仮)」
西岡 加名恵(京都大学)

「中内敏夫における『能力主義』把握と『現在主義』の位置づけ(仮)」
長谷川 裕(琉球大学)

司 会:
木村 元(一橋大学)

コーディネーター:
木村 元(一橋大学)
山田 哲也(一橋大学)