□第28回大会(2017年11月18日〜19日)
  於:金沢大学(石川県金沢市)


【課題研究1】 生活世界における「つながり」と人間形成─その目標・評価論的検討

「生活世界」とは、人びとがその意味づけやイメージを共有しつつつくり上げ、日常的に営んでいる、かれらにとって自明性を帯びた社会的世界のことである。本課題研究は、生活世界において取り結ばれる人と人との関係を「つながり」と呼び、それがこれまでどうあったのか、今現在どうあるか、進行中の大きな社会変動の中で今後どうありうるか・どうあるべきかを、特にその人間形成上の意味に焦点化し、目標・評価論的に考察することをテーマとする。
本課題研究は、@現代日本における「地域」と学校をめぐる政策的動きを踏まえて、「地域」を教育の目標内容とすることの可能性と問題点、Aおおよそ1990年代以降の日本の主として学校の場を舞台とした子ども同士及び子ども・教師の「つながり」を対象とした学校教師の実践、B20世紀のメキシコ農村の共同体における「つながり」のなかで新たな地域社会のかたちを模索する学校教師の実践、の分析・検討を通じて上記のテーマに迫っていく。

報告者:
「地域」を教育目標とすることからみえてくる「つながり」の意義と課題
小林千枝子(作新学院大学)

全生研「集団づくり」における「つながり」形成
仲嶺政光(富山大学)

20世紀メキシコの地域社会の変革と「つながり」形成
青木利夫(広島大学)


司 会・コーディネーター:
長谷川裕(琉球大学)


【課題研究2】 政治主体形成の課題と教育目標・評価論

今日の日本において、公共的価値や利益とは何かという問いを権力者に任せ、上から降りてくる公共性のためにつくす態度を学校教育で児童・生徒に育成すべきであるという、戦前の臣民型教育を復活させるかのごとき主張が一部の政治家からなされることも起こっている。また、雇用形態や収入等の様々な相違による格差によって、政治的にも経済的にも、社会的意思決定に参画することができていない人々が構造的に再生産される社会の傾向もみられる。本課題研究では、「自分たちが生きる社会における公共的な利益や価値について、自ら定義しようとし、自分も参加して定義された公共的規範には進んで従うという態度」(山口二郎)や「自分たちが考え抜いた公共的な利益や価値にもとづく政治的決定に主体的に参画するための知識や技能、思考力・判断力・表現力」を児童・生徒に育成するためには、学校教育はいかなる教育目標・教育内容を開発し、その成果をいかに評価していくことが求められるかを探究することを目的とする。

報告者:
学習指導要領に浸透する新自由主義イデオロギー
久保田貢(愛知県立大学)

社会科教育学は政治主体形成をめぐる課題にどのように応じてきたか?
川口広美(広島大学)

熟議デモクラシーをめぐる議論の動向と教育目標・評価論の課題
鋒山泰弘(追手門学院大学)


司 会・コーディネーター:
平岡さつき(共愛学園前橋国際大学)
岸本実(滋賀大学)


【公開シンポジウム】 障害のある人々の学卒後の生活・労働の現状から、教育を考える

2007年に現在の枠組のもとでの特別支援教育が始まって10年が経過しようとしている。この間、2013年に障害者差別解消法が成立し、日本社会においても、障害のある人々を包摂するための取り組みが本格的に始まっていった。「発達障害」への社会的注目ともあわせて、「健常者」を前提とした社会の仕組みのあり方それ自体が問い直されている。
注意すべきは、こうした障害のある人々を包摂するためのユニバーサル化への取り組みの動きが、労働市場が全般的に不安定化し,また、既存の福祉レジームが再編されるプロセスのなかで生じていることである。このことは、障害のある人々の既存の「自立」イメージにも一定の変容が迫られることを意味している。例えば、特別支援教育においても、教育目標としての「自立と社会参加」(学校教育法第81条)の強調や「キャリア教育」の推進など、労働能力を獲得し、経済的自立を最重要視する動きが強まっている。
2000年代以降の日本社会の生活・労働・福祉のあり方の変動を射程にいれたとき、障害のある人々が、健康で文化的な生活を送るために必要とされる教育とはどのようなものなのだろうか。それを考えるためには、障害のある人々が現在、学卒後にどのような現実に直面しているか、また、そうした現実に、現在の特別支援教育のあり方はどれだけ噛み合っているのか、そしてそれら障害のある人々の生活・労働と教育の関係のあり方にどのような現代日本的特徴が見られるのだろうか、などの視点から現状についての理解を深めることが欠かせない。学卒後に直面する現実に関する具体的な理解を抜きにして、望ましい教育を構想することは難しいからである。
本シンポジウムは、以上のような課題意識を共有しつつ、福祉社会学、障害者支援論、障害児教育学、それぞれの立場から障害のある人々が直面している現状ならびにそこで生じている課題を明らかにする。その上で、それらを踏まえた上で、障害のある人々に保障されるべき教育の姿を浮かび上げることが目指される。

シンポジスト:
特別支援教育制度のもとでの学校から社会への移行
河合隆平(金沢大学)

国際比較からみる障害者の学卒後の就労支援・生活支援
田邊浩(金沢大学)

障害のある人の学卒後の生活の現状と教育への期待
――障害者相談支援の活動から――
村田南美(金沢市障害者基幹相談支援センター)

司会・コーディネーター:
八木英二(京都橘大学)
松田洋介(金沢大学)