□第29回大会(2018年11月24日〜25日)
  於:和光大学(東京都町田市)


【課題研究1】 生活世界における「つながり」と人間形成─その目標・評価論的検討

 世界各国で目標の立て方の捉え直しが進められている。EUのキーコンピテンシーに限らず北米の21世紀スキル、イギリス、オーストラリアなどにも波及しており、それぞれの国でカリキュラムの開発や教育制度の整備が進められてきた。
 日本の教育改革の動向は、日本の社会と教育の課題に対応しようとしているものであるが、同時にこうした今日の世界(先進諸国)と連動しているものである。その根幹にあるものとして<知識から能力competenceへ>という次世代の形成の基本コンセプトの転換にかかわる動向がある。目標を知識・理解にとどめず、対人的、実践的技能や態度、姿勢、価値観をも含むものとして位置づけているが、その背景には、人類史的な社会変動が存在している。その中で教育のありかたが問われている動向があるのであり、変動する社会のなかで次世代の養成のために何を教えねばならないか、それはどのような基準によって定められるのか、改めて問われている。
 本課題研究では、社会変動の内実、およびそれが社会と教育に投げかける課題を明らかにした上で、教育目標・評価論の論点と展望を提示する。

報告者:
人類史的社会変動と教育の課題
木 村   元(一橋大学)
 
社会とその変動をどう捉え、教育目標をどう設定するか
  ――〈生活世界とシステム〉という視点から――
長谷川    裕(琉球大学)

教育目標・評価論の現代的課題
石 井 英 真(京都大学)



司 会・コーディネーター:
松 下 佳 代(京都大学)
斎 藤 里 美(東洋大学)


【課題研究2】 教育目標・評価論をめぐる諸課題の歴史的検討

 教育目標・評価学会では来年30周年に向けて、次の3つの観点から共同研究と記念出版の準備を進めている。1つには「つながる」という社会的諸関係づくりの能力・資質形成をめぐる教育目標と評価の課題、2つには「はたらく」という労働能力・資質形成をめぐる教育目標と評価の課題、3つには「きめてうごく」という政治主体形成の能力・資質形成をめぐる教育目標と評価の課題である。
 本課題研究ではこれらの3つの観点に関して、主に第二次世界大戦後の日本での諸研究を歴史的に検討することで、教育目標と評価に関わってどのような課題を現在深めるべきかについて提起してもらう。3つの報告に対する会員からの質疑・意見を受けて、30周年記念出版に向けての充実した内容づくりにつなげていきたい。

報告者:
「つながり」の歴史を踏まえて教育目標と評価の課題を探る
 ――地域と教育の「つながり」に焦点をあてて――
小 林 千枝子(作新学院大学)

戦後職業教育論の再検討
 ――民間教育運動の複線化構想に焦点をあてて――
松 田 洋 介(金沢大学)

戦後学校教育における政治的主体形成の歴史的検討
 ――社会科学の継承と子どもの意見表明の観点から――
平 岡 さつき(共愛学園前橋国際大学)
岸 本   実(滋賀大学)



司 会・コーディネーター:
鋒 山 泰 弘(追手門学院大学)
川 地 亜弥子(神戸大学)


【公開シンポジウム】 幼児教育における目標・評価論

 遊びや生活の中で様々な力を獲得していく乳幼児期の子どもの教育については、初等教育以上の学校における教育目標や評価、内容、方法とは異なる枠組みが必要であると認識されてきた。しかし近年、OECDのPISA調査に代表される国際的な学力調査のインパクトや、保育の質が子どもの将来を左右するという経済学の指摘を受けて、保育の質を改善するための評価尺度が開発されている。2017年3月に告示された新幼稚園教育要領では、幼児教育の目標が「資質・能力」および「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」として明示された。この告示を契機として、遊びや生活を通した〈形成〉的学びが大きな意味を持つ幼児教育において、目標をどのように考え、評価をどのように行うかという問題が広く議論される状況となっている。
 本シンポジウムでは、保育・幼児教育の目標・評価論の展開を、尺度による質評価の拡大と、それに対する評価のオルタナティブの探求に即して検討する。まず、OECDを中心とするグローバルな目標・評価の尺度開発の展開を報告する。次に、尺度によらない評価の探求に理論的な基盤を与えた『保育の質の議論を超えて』(Dahlberg et al. 1999)の議論を紹介する。同書は、技術的で一般的な質評価に対して、価値的で政治的な「意味生成」という評価言語を提示している。さらに、そのような目標・評価論の根拠となったレッジョ・エミリアの幼児教育を紹介し、日本の幼児教育および目標・評価論の歴史的な展開と関連づけて考察を行う。

シンポジスト:
OECDによる保育の質保証論と質の測定評価の動向
一 見 真理子(国立教育政策研究所)

保育評価のオルタナティブ 
 ――教育ドキュメンテーションの思想――
浅 井 幸 子(東京大学)

日本の保育実践史と目標評価論
太 田  素 子(和光大学)

コメンテーター:
川 地 亜弥子(神戸大学)

司会・コーディネーター:
大 西 公 恵(和光大学)
二 宮 衆 一(和歌山大学)