□第30回大会(2019年12月7日〜8日)
  於:京都府立大学(京都市)


【課題研究1】 観点別評価を授業改善とどうつなげるか

 学習指導要領の改訂を受け、中教審初等中等教育分科会教育課程部会において「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(2019年1月21日)がとりまとめられ、児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等についての「通知」が3月に出された。
 授業改善につながる学習評価が求められているが、毎時間、すべての観点を評価する学習指導案など、すでに小学校で間違っていたと総括されていることが、高校にまで広がる傾向がある。評価という営みは、いまだ教育にとって内在的で価値ある営みとしてはみなされていないという現状がある。学校現場では教育目標論を自覚的に問う視点が弱く、教育評価が単に手続きや処理としての作業になっている。
 このような現状認識の下、本課題研究では、教育目標論、教科教育論(教師教育論)、そして学校における実践という3つの方向から、以下の問いを中心に探究していく。そもそも観点とは何か、能力なのか、能力を身につけるためのプロセスなのか、それをどのように目標化すると、実践を疎外し、どのように目標化すると効果的なものになるのか。さらに実践的には、単元設計(指導案作成)の段階で、授業改善のために観点別評価を生かすようにするにはどうしたらよいのか。

報告者:
教育目標論の立場から
 ―日本型「観点別評価」の問題ー
石 井 英 真(京都大学)
 
教科教育論の立場から(小学校体育科を例にして)
木 原 成一郎(広島大学)

本田小学校の教育実践報告
銭 本 三千宏(大阪市立本田小学校)


司 会・コーディネーター:
岸 本    実(滋賀大学)
赤 沢 早 人(奈良教育大学)


【課題研究2】 道徳教育における 目標・評価をめぐる課題と展望

 2015年の学習指導要領一部改訂では「特別の教科道徳」が設置され、「考え議論する道徳」への質的転換がうたわれた。2017年学習指導要領改訂では、@知識及び技能、A思考力、判断力、表現力等、B学びに向かう力、人間性等の3つの柱で育成すべき資質・能力が整理された一方、「特別の教科道徳」については基本的に記述の変更がない。学校の教育活動全体を通じてよりよく生きるための道徳性を養うことがうたわれる中で、子どもたちの生活、他の教科・領域との関係をふまえ、道徳に関する教育目標をどのように設定し、実践に生かし、評価していくのかが問われている。
 2017年版学習指導要領の完全実施を目前に控え、道徳教育の目標・評価に関する歴史的展開、現代における実践的・理論的知見をふまえ、道徳教育における目標と評価について、批判的かつ実践的な検討を加えたい。

報告者:
戦後道徳教育における目標・評価論の展開
河 原 尚 武(元・鹿児島大学)

資質・能力と道徳性の関係
 ー「活用する力」をどう捉えるかー
荒 木 寿 友(立命館大学)

道徳教育の目標と評価を問う
 ー民間研からの提起をふまえてー
本 田 伊 克(宮城教育大学)


指定討論者:
大 津 悦 夫(元・立正大学)

司 会・コーディネーター:
小 林 千枝子(作新学院大学)
川 地 亜弥子(神戸大学)


【公開シンポジウム】 貧困・格差から学校教育の目標・評価を問い直す

 「子どもの貧困7人に1人」という日本社会における貧困・格差の状況に対して福祉と学校教育の役割が問われている。「格差・貧困をめぐる問題に対処するためには、学力を保障するだけでなく、学校をケアと承認の場に組み替えてゆく必要がある」という主張と実践もなされてきている。現代の子どもの貧困・格差についての理解の質の違いは、教師の仕事にどのような違いを生むのか。学校外の子どもの支援の実態・取り組みについて知ることは、学校で仕事をする者にとってどのような意味をもつのか。

シンポジスト:
貧困と向き合う学校教育実践史
 ー戦後夜間中学の事例を中心にー
江 口   怜(和歌山信愛大学)

反貧困を教育目標に据えた学校経営 
前   比呂子(追手門学院大学)

学校教育は子ども・若者のウェルビーイングに取り組めるのか?
末 冨   芳(日本大学)


司会・コーディネーター:
長谷川   豊(京都府立大学)
鋒 山 泰 弘(追手門学院大学)